生理痛や不妊、更年期障害など、女性の抱える健康課題に対して、今世界の各地で新たなソリューションが生み出されています。女性の健康課題の解決を目指すこれらの取り組みは”Women’s Health”という領域として年々注目度を増しており、投資領域としても成長を続けています。
Women’s Healthは、今まで長年ニッチな投資領域とされてきましたが、その理由には、該当する企業のExitが診断・がん・医療機器など別領域に分類されてしまい Women’s Health領域の市場が過小評価されていたという背景があります。
今年1月サンフランシスコで開催された”JPMorgan Healthcare Conference”では、Women’s Health領域について、今まで別領域に分類されていた企業も含めたより正確な見積もりが研究レポートとして発表され、2000年から2025年の25年間でのIPOおよびM&Aの総額が$1000億ドル(約15.5兆円、1ドル=155円)にのぼると報告されました。この“見えなかった実績”がデータとして整理されたことで、アメリカをはじめとするグローバルでは投資家の認識も転換点を迎えつつあります。
Forbes | Women’s Health Exits Surpassed $100 Billion
本サイト「Women’s Health Media」では、Women’s Healthに少しでも関心をもつ方々へ向けて、世界各地の女性の健康課題に対する新たな取り組みを調査・発信していきます。
初回の本記事では、2025年12月のWomen's Health領域における資金調達と薬事承認の事例をご紹介します。 資金調達では、AI診断支援、ライフステージ別サプリメント、生殖医療技術など、多様な領域で投資が活発化しています。 また、FDA承認やCE Mark取得により、尿失禁治療、不妊治療、うつ病治療など、新たな治療選択肢が登場しました。 本レポートでは、資金調達と薬事承認の両方について、世界の会社の事業内容と背景をご紹介します。
資金調達ニュース
Inito: 複数ホルモンを測定して排卵を確認できる在宅検査デバイス

画像出典: https://www.inito.com/
アメリカのスタートアップInitoは、家庭で使えるホルモン検査デバイスを開発し、Series Bで2,900万ドル(約45億円、1ドル=155円)を調達しました。
従来の排卵検査は、主に1種類のホルモン(LH)だけを測り、「妊娠しやすそうな日」を推測するものでした。 一方Initoは、尿を使った1回の検査で複数のホルモンを同時に測定し、実際に排卵が起きたかまでを確認できる点が特徴です。
使い方は妊娠検査薬に近く、尿を染み込ませた検査用ストリップを小型デバイスに差し込み、スマートフォンで結果を確認します。 測定されたホルモンの変化はAIが解析し、妊娠しやすい時期やホルモンの状態を分かりやすく表示します。
さらにInitoは、検査精度を高めるため、AIを使って設計した「合成抗体」を検査キットに活用する取り組みも進めています。 これは、特定のホルモンにより正確に反応する検査部品を人工的に設計する技術で、在宅検査でも医療機関に近い精度を目指すものです。
病院に通わずに、自分のホルモン状態を継続的に把握できる点から、妊活だけでなく、将来的には妊娠中や更年期など、女性のライフステージ全体への応用も想定されています。*
公式HP: https://www.inito.com/
Ultromics: 心エコーAI解析で心不全を早期発見
イギリスの医療AI企業Ultromicsは、American Heart Association(米国心臓協会)のGo Red for Women Venture Fundから投資を受けました。
心不全の一種である駆出率保存型心不全(HFpEF)は、女性が男性の2倍発症しやすく、臨床現場では最大64%の症例が診断されていません。
同社が提供する「EchoGo Heart Failure」は、心エコー画像をAIで解析し、HFpEFを検出するプラットフォームです。 同社の技術により、心エコーの自動解析と早期発見が可能になり、診断率の向上が期待されています。*
公式HP: https://www.ultromics.com/
Revela: AI超音波解析で子宮内膜症を早期診断
イギリスのRevelaは、子宮内膜症の診断を支援するAI超音波解析技術を開発し、Pre-Seedラウンドで約51万ドル(約7,900万円、1ドル=155円)を調達しました。
子宮内膜症は、不妊や慢性的な痛みの原因になることがありますが、超音波画像だけでは分かりにくいケースも多く、確定診断には手術が必要になることが少なくありませんでした。 そのため、診断までに長い時間がかかることが課題とされています。
Revelaの技術は、超音波検査で撮影された画像をAIが自動的に解析し、子宮内膜症の可能性がある部位を強調表示したレポートを医師に提示するものです。 これにより、医師は画像全体を一から精査するのではなく、「注意すべきポイント」を把握したうえで診断を進めることができ、見落とす可能性のある微細な兆候にも注意を向けやすくなります。 診断プロセスにおける負担の軽減や診断精度の向上が期待されています。*
公式HP: https://www.revela.health/
Metri Bio: 子宮内膜症治療薬の開発を目指すバイオテック
アメリカ・ボストンのバイオテックMetri Bioは、Pre-Seedラウンドで500万ドル(約7.8億円、1ドル=155円)を調達しました。
同社は「3D endometrial modeling platform」という子宮内膜の3次元モデル化プラットフォームを展開しています。 この技術により、子宮内膜症がどのように起こるのかを詳しく調べ、治療につながる有望な薬の候補を見つけやすくすることを目指しています。
子宮内膜症は、女性のおよそ10%が罹患するとされる一方で、現在の治療法は限られており、新しい治療選択肢が求められています。Metri Bioは、この子宮内膜を再現する基盤技術を出発点として、子宮内膜症の治療薬開発を進め、将来的には他の子宮内膜に関わる疾患にも応用できる創薬基盤の構築を視野に入れています。*
公式HP: https://metri.bio/
IVFmicro: マイクロ流体技術で体外受精の成功率を向上
イギリス・リーズ発のUniversity of Leedsスピンアウト企業IVFmicroは、Pre-seedラウンドで350万ポンド(約7.4億円、1ポンド=210円)を調達しました。
同社は、胚培養と取扱いを少量の栄養液で安全に行うマイクロ流体デバイスを開発しています。 従来の体外受精(IVF)では、胚を培養皿で大量の培養液に浸して育てますが、同社の技術により、より自然に近い環境で胚を育てることができます。
これにより、胚の数と質が10〜15%向上し、着床率や妊娠率の向上が期待されています。*
公式HP: https://ivfmicro.com/
AngelEye Health: NICUで家族と医療チームをつなぐコミュニケーションプラットフォーム
アメリカの新生児(NICU)・小児入院ユニット向け医療テクノロジー企業AngelEye Healthは、シリーズCで900万ドル(約14億円、1ドル=155円)を調達しました。
同社は、リアルタイムの安全なライブ配信で家族と医療チームをつなぐプラットフォームを提供しています。 授乳管理を効率化する「MilkTracker」、退院準備を支援する「NICU2Home」、医療チーム向けにAIで洞察を提供する「AIVision」など、包括的なソリューションを展開しています。
NICUでの家族との連携は、患者の回復に重要な役割を果たすため、本プラットフォームへの需要が高まっています。*
公式HP: https://www.angeleyehealth.com/
薬事承認ニュース
BlueWind Medical: 尿失禁治療の選択肢を広げる神経刺激ウェアラブルデバイスがFDA承認取得

画像出典: https://bluewindmedical.com/patients/revi-for-uui/
イスラエルの医療機器メーカー BlueWind Medical は、尿失禁の治療を目的とした医療機器を開発しています。今回、同社の治療システム「Revi」で使われるウェアラブルデバイスの改良版が、米国での使用に向けた承認(FDA 510(k))を取得しました。
尿失禁は、出産後や更年期を含む女性に多く見られ、日常生活の質に大きな影響を与える症状です。
Reviは、体内に埋め込む小型の刺激装置と、体の外から操作するウェアラブルデバイスを組み合わせて使う治療システムです。刺激装置は足首付近に埋め込まれ、ウェアラブルデバイスから信号を送ることで神経を刺激し、尿意切迫性失禁の症状改善を目指します。
今回承認を受けたのは、この体外で使用するウェアラブルデバイス部分の改良版です。これにより、Reviはウェアラブルデバイスによって作動する唯一のインプラント型神経刺激治療システムとして位置づけられ、薬物療法や、より負担の大きい治療に進む前の段階で選択できる治療の幅が広がりました。
BlueWind Medicalは、体内の刺激装置と使い慣れたウェアラブルデバイスを組み合わせる構成によって、治療の負担を抑えながら継続しやすい選択肢を提供することを目指しています。*
公式HP: https://bluewindmedical.com/
May Health: PCOS関連不妊治療システムがCE Markを取得
アメリカ・メンローパークのMay Healthは、不妊治療システムについて、欧州での販売を可能にするCE Markを取得しました。
このシステムは、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)による不妊を対象としています。 PCOSは、不妊の主要な原因の一つで、女性の約5〜10%が罹患するとされています。 PCOSでは、卵巣内に多数の小さな袋状の構造(嚢胞)が形成され、ホルモンのバランスが乱れることで排卵が起こりにくくなります。 従来の治療では、ホルモン療法や外科手術が必要でしたが、より体への負担が少ない治療が求められています。
Anavi Systemは、超音波で確認しながら卵巣の一部にエネルギーを当てて排卵を回復させる、医療機関で使用する医療機器です。 ホルモン療法を使わない一回の処置で、従来の治療に反応しないPCOSによる不妊に対して、外科手術や体外受精(IVF)に進む前に選択できる新たな治療選択肢となります。 より体への負担が少なく効果的な治療が可能になると期待されています。*
公式HP: https://mayhealth.com/
Flow Neuroscience: 在宅用うつ病治療デバイスがFDA承認を取得

画像出典: https://www.flowneuroscience.com/how-it-works/
スウェーデンのFlow Neuroscienceが、在宅用脳刺激デバイスFL-100についてFDA承認を取得しました。
うつ病は、女性の方が男性よりも約2倍の罹患率を示すとされており、特に妊娠中や産後、更年期など、ホルモン変動の時期に発症しやすいとされています。
FL-100は在宅用の経頭蓋直流電気刺激(tDCS)装置で、前頭前皮質に穏やかな電流を流して中等度〜重度の大うつ病性障害の症状を改善するものです。 成人のうつ病に対する単独および補助療法として初めてFDA承認を受けた在宅型脳刺激デバイスであり、薬物治療以外の選択肢や副作用の少ない治療を提供します。 在宅で治療を受けられることで、医療機関へのアクセスが困難な患者にも治療の機会が提供されると期待されています。*
公式HP: https://www.flowneuroscience.com/
Roche: 細菌性腟炎・カンジダ腟炎の診断テストがCE Markを取得
スイス・バーゼルに本拠を置くRocheは、腟感染症の診断検査についてCE Mark承認を取得しました。
細菌性腟炎とカンジダ腟炎は、女性の腟感染症の主要な原因で、症状が似ているため、正確な診断が重要です。 従来の診断方法では、細菌を育てる検査(培養)に数日かかる場合があり、その間に症状が悪化する可能性がありました。
承認されたcobas BV/CV assayは、腟から採取した検体から細菌性腟炎とカンジダ腟炎の主要な原因となる細菌と酵母を同時に検出する診断検査です。 従来の培養より短時間(3時間未満)で結果を提供し、治療の遅延や誤治療を減らすことで女性の症状改善と医療効率向上に寄与します。*
公式HP: https://www.roche.com/
まとめ
今回は、6件の資金調達と4件の薬事承認を紹介しました。
本サイトでは、Women's Health分野における最新の動向を、専門知識がない方にも分かりやすく解説しています。 今後も継続的に情報をお届けしていきますので、次回のメルマガをお楽しみに!