はじめに
本記事では、2025年12月のWomen's Health分野における9件の資金調達と6件の薬事承認を紹介します。 資金調達では、AI診断支援、ライフステージ別サプリメント、生殖医療技術など、多様な領域で投資が活発化しています。 また、FDA承認やCE Mark取得により、尿失禁治療、PCOS関連不妊治療、うつ病治療など、新たな治療選択肢が登場しました。 以下では、資金調達と薬事承認の両方について、各社の事業内容と背景をご紹介します。
Women's Health市場の動向
2025年12月のWomen's Health分野では、専門性の高い投資ファンドの成長が特に注目されています。
アメリカ・ニュージャージー州に拠点を置くベンチャーキャピタルFemHealth Venturesは、Fund IIで6,500万ドルを調達しました。 同社は女性の健康に特化した投資ファンドを運営しており、医薬品、医療機器、診断技術、デジタル・AI技術など、Women's Health分野の幅広い領域に投資しています。 2021年にローンチしたFund Iに続く第2弾ファンドで、既存の投資家と新規投資家の両方から資金を集めました。
専門性の高いVCファンドの成長は、Women's Health分野への投資機会の拡大を示しています。*
資金調達ニュース
Ultromics: 心エコーAI解析で心不全を早期発見
イギリスの医療AI企業Ultromicsは、American Heart Association(米国心臓協会)のGo Red for Women Venture Fundから投資を受けました。
心不全の一種である駆出率保存型心不全(HFpEF)は、女性が男性の2倍発症しやすく、臨床現場では最大64%の症例が診断されていません。
同社が提供する「EchoGo Heart Failure」は、心エコー画像をAIで解析し、HFpEFを検出するプラットフォームです。 同社の技術により、心エコーの自動解析と早期発見が可能になり、診断率の向上が期待されています。*
IVFmicro: マイクロ流体技術で体外受精の成功率を向上
イギリス・リーズ発のUniversity of Leedsスピンアウト企業IVFmicroは、Pre-seedラウンドで350万ポンド(約437万ドル)を調達しました。
同社は、胚培養と取扱いを少量の栄養液で安全に行うマイクロ流体デバイスを開発しています。 従来の体外受精(IVF)では、胚を培養皿で大量の培養液に浸して育てますが、同社の技術により、より自然に近い環境で胚を育てることができます。
これにより、胚の数と質が10〜15%向上し、着床率や妊娠率の向上が期待されています。*
Inito: 複数ホルモンを測定して排卵を確認できる在宅検査デバイス

画像出典: https://www.inito.com/
インドのスタートアップInitoは、家庭で使えるホルモン検査デバイスを開発し、Series Bで2,900万ドルを調達しました。
従来の排卵検査は、主に1種類のホルモン(LH)だけを測り、「妊娠しやすそうな日」を推測するものでした。 一方Initoは、尿を使った1回の検査で複数のホルモンを同時に測定し、実際に排卵が起きたかまでを確認できる点が特徴です。
使い方は妊娠検査薬に近く、尿を染み込ませた検査用ストリップを小型デバイスに差し込み、スマートフォンで結果を確認します。 測定されたホルモンの変化はAIが解析し、妊娠しやすい時期やホルモンの状態を分かりやすく表示します。
さらにInitoは、検査精度を高めるため、AIを使って設計した「合成抗体」を検査キットに活用する取り組みも進めています。 これは、特定のホルモンにより正確に反応する検査部品を人工的に設計する技術で、在宅検査でも医療機関に近い精度を目指すものです。
病院に通わずに、自分のホルモン状態を継続的に把握できる点から、妊活だけでなく、将来的には妊娠中や更年期など、女性のライフステージ全体への応用も想定されています。*
AngelEye Health: NICUで家族と医療チームをつなぐコミュニケーションプラットフォーム
アメリカの新生児(NICU)・小児入院ユニット向け医療テクノロジー企業AngelEye Healthは、シリーズCで900万ドルを調達しました。
同社は、リアルタイムの安全なライブ配信で家族と医療チームをつなぐプラットフォームを提供しています。 授乳管理を効率化する「MilkTracker」、退院準備を支援する「NICU2Home」、医療チーム向けにAIで洞察を提供する「AIVision」など、包括的なソリューションを展開しています。
NICUでの家族との連携は、患者の回復に重要な役割を果たすため、本プラットフォームへの需要が高まっています。*
Biologica: 女性のライフステージ別に設計されたサプリメント飲料

画像出典: https://biologica.com/
サンフランシスコ拠点のBiologicaは、女性のライフステージに応じて処方を分けたサプリメント飲料を開発し、Seedラウンドで700万ドルを調達しました。
Biologicaの製品は、女性の体調やホルモン状態が大きく変化する生殖期・更年期前後(ペリメノポーズ)・閉経後の3段階に対応しています。 いずれも水に溶かして飲む無糖タイプのサプリメントで、日常的に続けやすい形に設計されています。
生殖期向けはPMSや気分・肌の変化、更年期前後向けは睡眠の乱れや集中力低下、閉経後向けは認知機能や骨・心臓の健康など、それぞれの段階で起こりやすい変化を想定した配合です。
各処方には、臨床研究で使われてきた成分をベースに、ビタミンB群、プロバイオティクス、電解質などが含まれています。 治療を目的とするものではなく、年齢やホルモンの変化を前提にした日常的な栄養サポートを提供する点が特徴です。*
Revela: AI超音波解析で子宮内膜症を早期診断
イギリスのRevelaは、子宮内膜症の診断を支援するAI超音波解析技術を開発し、Pre-Seedラウンドで約51万ドルを調達しました。
子宮内膜症は、不妊や慢性的な痛みの原因になることがありますが、超音波画像だけでは分かりにくいケースも多く、確定診断には手術が必要になることが少なくありませんでした。 そのため、診断までに長い時間がかかることが課題とされています。
Revelaの技術は、超音波検査で撮影された画像をAIが自動的に解析し、子宮内膜症の可能性がある部位を強調表示したレポートを医師に提示するものです。 これにより、医師は画像全体を一から精査するのではなく、「注意すべきポイント」を把握したうえで診断を進めることができ、見落とす可能性のある微細な兆候にも注意を向けやすくなります。 診断プロセスにおける負担の軽減や診断精度の向上が期待されています。*
Trial Library: 臨床試験へのアクセスを支援するAIプラットフォーム
アメリカの臨床試験へのアクセスを支援するAIプラットフォーム企業Trial Libraryは、Series Aで1,000万ドルを調達しました。
臨床試験への参加は、新しい治療法へのアクセスを提供する一方で、患者が臨床試験を見つけにくい、参加のハードルが高いなどの課題があります。 同社のプラットフォームにより、患者と臨床試験のマッチングが効率化され、新薬開発の加速が期待されています。*
MyBliss: マイクロバイオームに配慮した性健康製品
イギリスの女性向け性健康スタートアップMyBlissは、Seedラウンドで資金調達を行いました。
同社は、ヴィーガン認証でグリセリン・パラベン・殺精子剤・香料不使用の「MyBliss Ultra-Thin Condoms」を提供しています。 また、膣のマイクロバイオームを支援する次世代コンドームの開発を進めており、マンチェスター大学とInnovate UKの10万ポンド(約12.5万ドル)助成を受けています。 さらに、保湿・pHバランス・膣の健康を支える「MyBliss Intimate Gel」というマイクロバイオーム配慮のジェルも展開しています。
同社の製品は、化学添加物を避け、マイクロバイオームに配慮した設計となっており、女性の性健康における新たな選択肢を提供しています。*
Metri Bio: 子宮内膜症治療薬の開発を目指すバイオテック
アメリカ・ボストンのバイオテックMetri Bioは、Pre-Seedラウンドで500万ドルを調達しました。
同社は「3D endometrial modeling platform」という子宮内膜の3次元モデル化プラットフォームを展開しています。 この技術により、子宮内膜症がどのように起こるのかを詳しく調べ、治療につながる有望な薬の候補を見つけやすくすることを目指しています。
子宮内膜症は、女性のおよそ10%が罹患するとされる一方で、現在の治療法は限られており、新しい治療選択肢が求められています。Metri Bioは、この子宮内膜を再現する基盤技術を出発点として、子宮内膜症の治療薬開発を進め、将来的には他の子宮内膜に関わる疾患にも応用できる創薬基盤の構築を視野に入れています。*
薬事承認ニュース
BlueWind Medical: 尿失禁治療の選択肢を広げる神経刺激ウェアラブルデバイス
イスラエルの医療機器メーカー BlueWind Medical は、尿失禁の治療を目的とした医療機器を開発しています。今回、同社の治療システム「Revi」で使われるウェアラブルデバイスの改良版が、米国での使用に向けた承認(FDA 510(k))を取得しました。
尿失禁は、出産後や更年期を含む女性に多く見られ、日常生活の質に大きな影響を与える症状です。
Reviは、体内に埋め込む小型の刺激装置と、体の外から操作するウェアラブルデバイスを組み合わせて使う治療システムです。刺激装置は足首付近に埋め込まれ、ウェアラブルデバイスから信号を送ることで神経を刺激し、尿意切迫性失禁の症状改善を目指します。
今回承認を受けたのは、この体外で使用するウェアラブルデバイス部分の改良版です。これにより、Reviはウェアラブルデバイスによって作動する唯一のインプラント型神経刺激治療システムとして位置づけられ、薬物療法や、より負担の大きい治療に進む前の段階で選択できる治療の幅が広がりました。
BlueWind Medicalは、体内の刺激装置と使い慣れたウェアラブルデバイスを組み合わせる構成によって、治療の負担を抑えながら継続しやすい選択肢を提供することを目指しています。*
May Health: PCOS関連不妊治療システムがCE Markを取得
アメリカ・メンローパークのMay Healthは、不妊治療システムについて、欧州での販売を可能にするCE Markを取得しました。
このシステムは、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)による不妊を対象としています。 PCOSは、不妊の主要な原因の一つで、女性の約5〜10%が罹患するとされています。 PCOSでは、卵巣内に多数の小さな袋状の構造(嚢胞)が形成され、ホルモンのバランスが乱れることで排卵が起こりにくくなります。 従来の治療では、ホルモン療法や外科手術が必要でしたが、より体への負担が少ない治療が求められています。
Anavi Systemは、超音波で確認しながら卵巣の一部にエネルギーを当てて排卵を回復させる、医療機関で使用する医療機器です。 ホルモン療法を使わない一回の処置で、従来の治療に反応しないPCOSによる不妊に対して、外科手術や体外受精(IVF)に進む前に選択できる新たな治療選択肢となります。 より体への負担が少なく効果的な治療が可能になると期待されています。*
Sprout Pharmaceuticals: 閉経後女性向けHSDD治療薬がFDA承認を取得
アメリカのSprout Pharmaceuticalsが、低性欲障害(HSDD)治療薬の適応拡大でFDA承認を取得しました。
HSDDは、性欲の持続的な低下により、個人の苦痛や人間関係の問題を引き起こす疾患です。 従来、女性の性機能障害に対する治療選択肢は限られていました。
承認されたAddyi(flibanserin)は、非ホルモン性の経口薬で、神経伝達物質に作用してHSDDを改善する薬剤です。 本承認により、閉経前女性に続いて閉経後女性(65歳未満)にも治療選択肢が拡大し、65歳未満の女性では唯一のFDA承認の経口治療薬となりました。*
Flow Neuroscience: 在宅用うつ病治療デバイスがFDA承認を取得
スウェーデンのFlow Neuroscienceが、在宅用脳刺激デバイスFL-100についてFDA承認を取得しました。
うつ病は、女性の方が男性よりも約2倍の罹患率を示すとされており、特に妊娠中や産後、更年期など、ホルモン変動の時期に発症しやすいとされています。
FL-100は在宅用の経頭蓋直流電気刺激(tDCS)装置で、前頭前皮質に穏やかな電流を流して中等度〜重度の大うつ病性障害の症状を改善するものです。 成人のうつ病に対する単独および補助療法として初めてFDA承認を受けた在宅型脳刺激デバイスであり、薬物治療以外の選択肢や副作用の少ない治療を提供します。 在宅で治療を受けられることで、医療機関へのアクセスが困難な患者にも治療の機会が提供されると期待されています。*
Roche: 細菌性膣炎・カンジダ膣炎の診断テストがCE Markを取得
スイス・バーゼルに本拠を置くRocheは、膣感染症の診断検査についてCE Mark承認を取得しました。
細菌性膣炎とカンジダ膣炎は、女性の膣感染症の主要な原因で、症状が似ているため、正確な診断が重要です。 従来の診断方法では、細菌を育てる検査(培養)に数日かかる場合があり、その間に症状が悪化する可能性がありました。
承認されたcobas BV/CV assayは、膣から採取した検体から細菌性膣炎とカンジダ膣炎の主要な原因となる細菌と酵母を同時に検出する診断検査です。 従来の培養より短時間(3時間未満)で結果を提供し、治療の遅延や誤治療を減らすことで女性の症状改善と医療効率向上に寄与します。*
DeepEcho: 胎児超音波AI解析プラットフォームがFDA承認を取得
モロッコ・カサブランカを拠点とするDeepEchoは、2025年6月に胎児超音波解析プラットフォームについてFDA承認を取得しました。
妊婦健診における超音波検査は、胎児の成長や異常を確認する重要な検査ですが、専門的な技術と経験が必要です。 特に医療資源が限られた地域では、適切な超音波検査を受けることが困難な場合があります。
承認されたDeepEchoのプラットフォームは、超音波検査の撮影を案内し、胎児の大きさを自動で測定する機能を提供します。 訓練が少ない医療従事者向けのリアルタイムガイダンスや自動画像解析機能も備えており、同社のAI技術により、訓練が少ない医療従事者でも正確な超音波検査が可能になります。 妊婦健診へのアクセスが改善され、臨床での効率化が期待されています。*
まとめ
今回は、9件の資金調達と6件の薬事承認を紹介しました。
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