2026年6月号

Women’s Health Media」では、Women’s Health分野の動向を調査・発信しています。本号では、今年4月に発表された資金調達8件・薬事承認3件の計11件の事例を紹介します。

4月は、うれしいことに日本から2社が資金調達をされました。京都のFloraは、企業で働く女性の体調やライフイベントと仕事の両立を支える法人向けサービス「Wellflow」などを展開し、約2.3億円を調達しました。東京のYStoryは、見過ごされやすい更年期の不調に向き合うケアアプリ「JoyHer」を軸に、プレシリーズAを実施しました。

海外からも、乳がん・卵巣がんの予防スクリーニングや閉経後の骨量低下を抑えるデバイスなど最新の事例をご紹介しています。

ぜひご一読ください。

資金調達ニュース

Flora: フェムテックとAIで女性の健康課題に向き合うFloraが総額約2.3億円を調達し、法人向け支援と海外展開を強化

Flora株式会社(日本、京都市)は、2026年4月に総額約2.3億円を調達しました。

Women’s Health分野では、医療や商品開発のもとになるデータが男性中心になりやすく、女性の健康課題が十分に見えにくいことがあります。Floraは、こうした見えにくさを埋めるWomen's Healthの企業です。

同社のWellflowは、企業で働く女性に向けて、体調の悩みやライフイベントと仕事の両立を支える法人向けサービスです。従業員は自分に合った支援を受けやすくなり、企業側は健康課題による損失を把握しながら対策を考えやすくなります。

あわせて、Floraは約20万人のユーザーデータを基盤に、AIで健康課題を分析し、Wellflowの個別支援やMoonlyの予測機能、Flora Expertでの事業開発支援へ展開しています。 *

プレスリリース:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000078.000072971.html

公式HP: https://flora-tech.jp

YStory: プレシリーズA調達で更年期ケアアプリと法人向け女性ヘルス基盤の展開を加速

YStory(日本、東京)は、Pre-Series Aで資金調達を実施しました。 更年期は多くの女性が経験する一方で、症状が見過ごされやすく、適切な支援につながりにくい女性の健康課題です。

同社のJoyHerは、更年期の不調を抱える女性が日々の体調を記録しながら、セルフケアに取り組めるアプリです。法人向けのJoyHer企業版では、企業や健康保険組合が従業員の更年期課題を把握し、安心して使える支援環境を整えられます。

利用者の約8割で1〜3か月の利用後に更年期指数の改善が確認されており、先行研究でも91名を対象に症状スコアの有意な改善が示されました。

JoyHerは、更年期女性の症状変化を継続的に取得し、京都大学との共同研究を通じてデジタル介入の有効性を検証している更年期ケアのデジタルヘルス基盤です。現在は約400名を対象としたランダム化比較試験も進んでおり、個人向けアプリで蓄積した7万人超の女性健康データを基盤に、企業向け支援や共同研究にも展開しています。 *

プレスリリース:https://ystoryhealth.com/news/20260427-pressrelease-1

公式HP: https://ystoryhealth.com/

BASE4 Biosciences: 女性の生物学的差を反映する単一採血マルチオミクス基盤の開発でPre-Seedを調達

BASE4 Biosciences(スペイン、バルセロナ)は、Pre-Seedで100万ドル(約1億5,500万円、1ドル=155円)を調達しました。

同社はWomen's Healthを主軸に据えており、これまで臨床研究で十分に反映されてこなかった女性の体の違いを前提に、健康状態を早く捉える仕組みを開発しています。

BASE4のプラットフォームは、1回の採血で体の状態を調べるサービスです。女性向けには卵巣や子宮、腟、ホルモン変化などの状態を見ながら、妊よう性や更年期に関わる変化を把握しやすくします。

これにより、不調がはっきり出る前や、一般的な検査で異常が見つかる前の変化を捉えやすくなります。記事では、卵巣組織は他の組織より約5倍速く老化し、35歳超では体外受精の75%超が不成功とされており、より早い気づきが利用者の選択肢拡大につながる可能性があります。

中核機能は、トランスクリプトーム解析とゲノム解析、AIを組み合わせ、1つの血液サンプルから47組織の生物学的状態と年齢を推定するマルチオミクス基盤です。1万5,000超の遺伝子と330の代謝経路を解析し、性別特異的モデルで臓器ごとの機能低下や治療毒性の兆候を早期に捉えることを目指します。

あわせて、予防医療向けの早期異常検知や、製薬・臨床研究向けの組織レベル毒性評価にも展開します。 *

プレスリリース:https://base4bio.com/

公式HP: https://www.base4bio.com

ScreenPoint Medical: 乳がん検診AIの拡大に向け既存投資家から1,400万ドルを調達

ScreenPoint Medical(オランダ)は、既存投資家のInsight PartnersとSiemens Healthineersから1,400万ドル(約21億7,000万円、1ドル=155円)を調達しました。

同社は乳がん領域の企業で、乳房X線検査の画像をAIで読み取り、がんの見落としを減らしたり、将来のリスクを評価したりする技術を開発しています。主力のTranspara Breast AIは、乳がん検診向けの画像解析サービスで、医師が確認すべき画像を優先づけし、異常の可能性が低い検査を振り分けられるのが特徴です。

利用者にとっては、がんをより早く見つけられる可能性が高まり、検診体制の負担も軽くなります。記事では、通常の二重読影と比べてがん検出の改善と業務負荷の軽減が示されたほか、別研究では低リスクのマンモグラフィを医師の読影対象から外すことで、検診業務量を最大63.6%減らせる可能性が示されました。

また同社の画像ベースの乳がんリスク予測アルゴリズムは、5年以内の発症予測で他社手法を上回り、リスク上位14%の群で将来の乳がんの41.8%、検診間に見つかるがんの50.3%を予測しました。調達資金は製品開発、海外展開、予防から治療までを含む乳がんケア全体での取り組み強化に充てられます。 *

プレスリリース:https://screenpoint-medical.com/insights/screenpoint-secures-14m-funding

公式HP: https://www.screenpointmed.com

Osteoboost Health: 低骨密度の閉経後女性向け処方ウェアラブルの量産と研究拡大へ800万ドルを調達

Osteoboost Health(米国)は、非公開ラウンドで800万ドル(約12億4,000万円、1ドル=155円)を調達しました。調達した資金は、低骨密度向け処方ウェアラブルの生産拡大、臨床研究の拡充、販売体制の強化に充てられます。

同社が扱うのは、女性の更年期以降に進みやすい骨量低下の領域です。骨量が減っても自覚しにくく、骨粗しょう症になる前の段階では使える薬がほとんどないため、Women's Healthの中でも見過ごされやすい課題です。

主力のOsteoboostは、閉経後で骨密度が低い女性向けの処方ウェアラブルです。腰の低い位置に装着することで、自宅で継続的に使える非薬物の選択肢を提供します。

患者にとっては、骨密度低下が進む前に対策を始めやすくなる点が重要です。12カ月の二重盲検試験では、週3回以上使った人で、骨密度低下の進行が背骨で85%、股関節で55%抑えられました。

Osteoboostは、腰椎と股関節に低振幅の標的振動を与えるDe Novo承認済みの処方医療機器で、2024年にはFDA Breakthrough Device designationも取得しました。補助サービスとして、骨粗しょう症の人向けオンライン理学療法プログラムWellenも提供しており、680人の調査では1コース後に下半身の筋力が22.8%向上しました。 *

プレスリリース:https://www.osteoboost.com/press-release/osteoboost-secures-8m-to-expand-access-to-its-fda-cleared-prescription-wearable-for-bone-health

公式HP: https://www.osteoboost.com

Protocole: 規制対応したペプチド提供基盤の構築に向けSeedで600万ドルを調達

Protocole(米国)は、Seedで600万ドル(約9.3億円、1ドル=155円)を調達しました。 同社は女性向け専業ではありませんが、ペプチドはホルモンの不調や更年期、健康寿命への関心の高まりとともに、Women’s Healthでも注目が広がる領域です。一方で、これまでは品質や入手経路、医療者の関与にばらつきがあり、安心して使いにくいことが課題でした。 Protocoleは、健康目標に合わせたペプチドの利用計画を提案し、医療者への相談から受け取りまでをつなぐサービスです。利用者は問診に回答すると、回復、身体機能、長寿といった目的に応じた個別プランを受けられます。 こうした仕組みにより、研究用や非公式ルートに頼らず、より安全で分かりやすい形で継続利用しやすくなります。記事では具体的な治療効果の数値は示されていませんが、規制下の薬局と臨床医を組み合わせることで、品質管理や継続フォローの改善が期待されます。 主力のProtocoleは、clinical-gradeのペプチドに対して、 intake情報と健康目標をもとにパーソナライズしたprotocolを提示し、licensed clinicianの監督下でprescribingからfulfillmentまでをつなぐデジタル基盤です。 今後は、臨床インフラの拡充に加え、protocolの種類を増やし、処方、提供、会員体験までを一体で管理する体制づくりを進める方針です。 *

プレスリリース:https://insider.fitt.co/press-release/protocole-emerges-from-stealth-with-6m-seed-round-led-by-rare-capital-to-build-the-first-clinical-grade-peptide-platform/

公式HP: https://www.theprotocole.com

Proseek Bio: 卵巣がんの不要な診断手術を減らす血液検査「OC-Triage」の実用化に向けSeedで約1.5百万豪ドルを調達

Proseek Bio(オーストラリア、ブリスベン)は、Seedで150万豪ドル(約2億3,250万円)を調達しました。卵巣がんは女性の健康課題のなかでも見つかるのが遅れやすく、疑いがある段階で多くの人が手術に進む一方、結果的にがんではないケースも多い領域です。

同社のOC-Triageは、卵巣がんが疑われる女性向けの血液検査です。採血で得られる情報を使って、手術を急ぐべきか、追加の評価が必要かを見極めやすくし、医師の紹介判断や診療の進め方を助けます。

現状では、卵巣がんが疑われて受ける診断手術の最大80%が良性という報告があり、OC-Triageが広がれば、不必要な侵襲的手術を減らし、本当に対応を急ぐ患者をより早く適切な医療につなげられる可能性があります。

主力のOC-Triageは、血中の特定の糖タンパク質を測定し、卵巣がんリスクを層別化するトリアージ検査です。今回の資金は、臨床検査室での導入と検証を進め、市場投入や規制対応を見据えた次段階の開発に充てられます。 *

プレスリリース:https://www.proseek.bio/post/proseek-bio-raises-a-1-5m-to-advance-ovarian-cancer-diagnostics

公式HP: https://www.proseekbio.com

Coral: カナダのミッドライフ女性向けバーチャルクリニックがAcceleration roundで400万カナダドルを調達

Coral(カナダ)は、Acceleration roundで400万カナダドル(約4億6,000万円、1カナダドル=115円)を調達しました。ペリメノポーズ(閉経に向かう過渡期)や更年期は、ホルモン変化だけでなく体重や気分の変化も重なりやすい女性特有の健康課題です。

Coralは、ミッドライフ女性向けのバーチャルクリニックで、更年期前後の不調、代謝の悩み、体重管理をオンラインでまとめて相談できるサービスです。症状ごとに別々の窓口を探さなくても、一つの仕組みで継続的な支援を受けられます。

利用者にとっては、心の健康や更年期症状の改善を早い段階で実感しやすい点が特徴です。開始から90日以内に、会員の80%がメンタル面の大きな改善を報告し、70%以上がペリメノポーズや更年期症状の重要な軽減を報告しています。

主力のCoralは、ホルモンヘルス、代謝ウェルネス、体重管理を統合したデジタル医療モデルで、生活習慣介入と医療的介入を組み合わせながら、ミッドライフ期の女性の長期的な健康最適化を目指します。今回の資金は、カナダ全土への拡大、臨床チームの増強、AI機能の開発継続に充てられる予定です。 *

プレスリリース:https://brightspark.com/blog/behind-the-deal-our-investment-in-coral

公式HP: https://coral.ca

薬事承認ニュース

FertilAI: 不妊治療のタイミング最適化を支援するAIアルゴリズムがEUのCE Markを取得

FertilAI(イスラエル、テルアビブ)は、不妊治療の実施タイミングを見極めるための新しいAI支援技術について、EU医療機器規則に基づくCE Markを取得した。治療中の周期に合わせて判断を助ける仕組みで、医師不足や待ち時間の長期化が課題となる不妊医療の現場で、より適切な時期に治療を進めやすくする。

患者や利用者にとっては、通院中の細かな経過観察の負担を減らしながら、妊娠につながる可能性の高い時期を狙いやすくなる点が意味を持つ。記事によると、この技術は10万件超の治療周期データで学習しており、自然周期の排卵を最大6日前から予測できるため、子宮内授精や凍結胚移植の時期最適化に役立ち、妊娠の可能性向上とモニタリング回数の削減が期待される。

承認対象はFertilaneで、EMR(電子カルテ)と連携するSaaS型の臨床意思決定支援プラットフォームとして提供される。主な構成要素は、成熟卵子の回収数を予測するStimAI(EU MDR Class IIa)と、排卵時期を予測するOvuPredict(EU MDR Class I)で、体外受精(IVF)、子宮内授精(IUI)、凍結胚移植(FET)に関わる治療判断を支援する。 *

プレスリリース:https://www.prnewswire.co.uk/news-releases/fertilai-secures-worlds-first-ce-mark-for-predictive-ai-in-fertility-treatment-cycle-optimization-302743712.html

公式HP: https://www.fertilai.com

Waters Corporation: 自宅で子宮頸がん検診の検体採取ができるHPV検査キットと検査法がFDA承認・クリアランスを取得

Waters Corporation(アメリカ)は、子宮頸がん検診のための自宅採取キットと、それを用いるHPV検査法についてFDAの承認・クリアランスを取得しました。これにより、女性は医療機関に行かなくても自宅で検体を採取し、郵送で検査に出せるようになります。

この仕組みは、受診予約の手間や移動の負担、検査時の不快感や心理的な抵抗感を減らし、検診を受けやすくすることが期待されます。記事では、子宮頸がんの約60%が未受診または受診不足の人に発生しているとされており、検診機会を広げることで、がんの見逃しを減らし、より早い段階での発見や対応につながる可能性があります。

承認されたのは、Onclarity HPV Self-Collection KitとBD Onclarity HPV Assayです。前者は自宅で子宮頸がん検診用の検体を自己採取するデバイス、後者はその検体から発がんリスクの高いHPVを調べる診断技術です。検査は高リスクHPVを幅広く検出し、6種類を個別に、3群をまとめて判定する拡張ジェノタイピングに対応します。 *

プレスリリース:https://ir.waters.com/News--Events/newsroom/news-details/2026/Waters-Announces-FDA-Clearance-of-the-Most-Comprehensive-At-Home-Cervical-Cancer-Screening-Tool-the-Onclarity-HPV-Self-Collection-Kit-and-FDA-Approved-HPV-Assay/default.aspx

公式HP: https://www.waters.com

Sibel Health: 母体と胎児を同時に見守る完全ワイヤレス監視システムでFDA 510(k)承認を取得

Sibel Health(アメリカ)は、出産時に母体と胎児の状態を同時に見守る完全ワイヤレスの新しい監視システムで、FDAの510(k)承認を取得しました。従来の有線機器のように体を機械につないでベッド周辺に縛られにくく、医療者が異常の兆候に早く気づける体制づくりを後押しします。

患者や利用者にとっては、分娩中の動きやすさを保ちながら、母体の体調変化、胎児の心拍、陣痛の進み具合を続けて確認しやすくなる点が重要です。記事では、米国の妊産婦死亡率が出生10万件あたり22人、世界では毎日約700人が妊娠中または出産時に死亡するとされており、こうした見守りの不足を補うことで、合併症の早期発見につながる可能性があります。

承認されたのはANNE Maternalで、母体・胎児モニタリング用のウェアラブル医療機器です。柔らかいセンサーで母体のバイタルサインを連続測定し、胎児心拍モニタリングと子宮収縮検知を無線で行います。自動アラート機能やポイントオブケア超音波との連携にも対応し、医療資源が限られる地域での活用も想定されています。 *

プレスリリース:https://www.prnewswire.com/news-releases/sibel-health-receives-fda-clearance-for-anne-maternal-a-comprehensive-and-fully-wireless-maternal-fetal-monitoring-platform-302737398.html

公式HP: https://www.sibelhealth.com

まとめ

今回は、資金調達 8 件、薬事承認 3 件の計 11 件を紹介しました。「採血1本」「自宅採取」「ワイヤレス」 といったキーワードに象徴されるように、女性への身体的・心理的な負担を最小化しながら病気や不調の兆候を早めに捉える技術が着実に実用化に近づいてきており、こういった技術が世の中に普及していくのが楽しみです。