2026年8月号

「Women’s Health Media」では、Women’s Health分野の動向を調査・発信しています。本号では、今年6月に発表された資金調達9件・薬事承認2件の事例をご紹介します。

6月は、採血に頼らずホルモンの変化を続けて追う技術が、同じ月に2件並びました。体外受精のタイミング判断を支えるパッチと、手首に装着して日常のホルモン変動を捉えるウェアラブルです。妊活から更年期まで、女性の体調を左右するホルモンの変化を、診察の合間でも把握しやすくする流れが強まっており、今後の女性の健康管理において重要な役割を果たすことが期待されます。

日本からは、更年期に特化したオンライン診療と、卵子成熟を体外で支える技術の事例も取り上げています。 ぜひご一読ください。

資金調達ニュース

Impli: IVF向けホルモン連続モニタリング用マイクロニードルパッチの臨床検証に向け140万ポンドの助成金を獲得

Impli BEAM マイクロニードルパッチ

画像出典: https://phta.co.uk/impli-awarded-1-4m-nihr-grant-to-advance-world-first-continuous-hormone-monitoring/

Impli(イギリス、ロンドン)は、Grantで約177.8万ドル(約2.8億円、1ドル=155円)に相当する140万ポンドの助成金を獲得しました。対象は体外受精(IVF)向けのホルモン連続モニタリング技術で、治療のタイミング判断を今より細かく支えることが狙いです。

同社のBEAMは、不妊治療を受ける人向けに、ホルモンの変化を自宅でも続けて追えるパッチ型サービスです。上腕に貼って使い、採血のたびに通院しなくても、排卵や着床に関わる重要な変化をスマートフォンで確認しやすくします。

IVFでは成功率が15〜32%にとどまる一方、判断材料となるホルモン値が24〜48時間前の採血結果に頼ることがあり、重要な変化を見逃すことがあります。BEAMにより、1回の治療周期で最大10回必要な通院採血を最少2回まで減らせる可能性があり、患者の負担軽減と、より適切な投薬や採卵タイミングの判断につながります。

BEAMは、間質液中のエストラジオール、LH、プロゲステロンを、アプタマー型電気化学バイオセンサーを組み込んだ生体適合性マイクロニードルパッチで連続測定するデジタル診断デバイスです。取得データは無線送信され、AIが生の信号をリアルタイムのホルモン推移へ変換します。今回の資金は、ISO 13485準拠の最終設計と製造、25人規模のパイロット試験、AIモデル開発、NHS導入に向けた規制対応に使われます。 *

プレスリリース:https://phta.co.uk/impli-awarded-1-4m-nihr-grant-to-advance-world-first-continuous-hormone-monitoring/

公式HP: https://impli.co

Clair Health: 女性向けの非侵襲ホルモン連続測定ウェアラブル開発で1,160万ドルを調達

Clair Health ウェアラブル

画像出典: https://wearclair.com/

Clair Health(米国)は、ラウンド非公開で1,160万ドル(約18億円、1ドル=155円)を調達しました。 女性の体調はホルモンの変化に大きく左右されますが、それを日常的に続けて把握する手段は限られており、妊活、更年期、ホルモン由来の不調の理解を難しくしてきました。 Clair Health wearableは、女性向けの手首装着型デバイスで、採血や尿検査をせずにホルモンの変化を続けて確認できるサービスです。 これにより、利用者は体調の波や妊娠しやすい時期をつかみやすくなり、従来4段階ほどで捉えられがちだった周期の変化を、ベータ試験では9つの細かな段階として見分けられたとされています。 同社の中核は、10個のバイオセンサーと130以上の独自指標を組み合わせ、エストロゲン、プロゲステロン、LH、FSHを非侵襲で連続推定するホルモンモニタリング技術です。 あわせて、妊活のタイミング把握、PCOSなどのホルモン関連課題、運動時の回復管理、ペリメノポーズ(閉経に向かう過渡期)への対応にも活用を広げる方針です。 *

プレスリリース:https://techcrunch.com/2026/06/17/two-stanford-grads-raise-11m-to-build-a-noninvasive-wearable-for-hormone-tracking/

公式HP: https://wearclair.com

Mammogen: 高濃度乳房の女性向け乳がん早期検出を目指すRNA血液検査の開発でSeries A最大3,000万ドルを調達

Mammogen(米国、ニューポートビーチ)は、Series Aで最大3,000万ドル(約46億5,000万円、1ドル=155円)を調達しました。 乳房の脂肪が少なく組織が密な「高濃度乳房」は、マンモグラフィで腫瘍も乳腺も白く写るため、乳がんを見つけにくいことがあり、女性の検診後の判断が難しくなる課題があります。 genTRU-breastは、高濃度乳房と分かった女性向けの血液検査で、追加の画像検査や生検が本当に必要かを見極めるためのサービスです。 この仕組みにより、低リスクの人は超音波やMRI、不要な生検を避けやすくなり、高リスクの人はMRIに進んでがんの有無を早く確かめやすくなります。特に、極めて高濃度の乳房ではマンモグラフィが最大70%のがんを見逃す可能性があるとされており、より早い発見は乳房切除を避けられる選択肢につながる可能性があります。 genTRU-breastは、RNAシグネチャーを用いてマンモグラフィ後のトリアージを行う診断ソリューションで、対象は高濃度乳房の女性です。2023年には500人超を含む6つの独立コホートでCLIA検証を完了しており、現在はIRB承認済みのピボタル試験が進行中です。 *

プレスリリース:https://www.mammogen.bio/mammogen-secures-up-to-30-million-series-a-financing-to-advance-rna-based-breast-cancer-detection-platform

公式HP: https://www.mammogen.com

Anodyne Nanotech: 肥満治療向けGLP-1マイクロニードルパッチの開発を進めるためSeries Aで1,260万ドルを調達

Anodyne Nanotech(米国、ボストン)は、Series Aで1,260万ドル(約19億5,300万円、1ドル=155円)を調達しました。今回の資金は、肥満治療向けの週1回GLP-1パッチ「ANN-101」を第I相試験へ進めるために使われます。

この話題がWomen's Healthに関わるのは、GLP-1による減量で失われる体重の最大40%が筋肉などの除脂肪体重とされ、とくに閉経後に筋肉量が落ちやすい女性では重要な課題だからです。ANN-101は、肥満のある人が注射ではなく皮膚に貼るパッチでGLP-1を受け取れるサービスで、冷蔵保管もいりません。

前臨床では、セマグルチド3.6mgの皮下注射に相当する量を届け、体内で使われる割合は50%超でした。ゆっくり薬が出る設計により、お腹の不快感などで治療をやめてしまう人を減らせる可能性があります。実際にGLP-1治療は4週間以内に30%、12週間前に58%が中止するとのデータもあります。

中核技術の「HeroPatch」は、固体マイクロニードルで高分子薬を皮膚から複数ミリグラム投与できるドラッグデリバリー基盤です。さらに同社は、筋力改善を目指すANN-102も開発しており、将来的には減量と筋肉維持を1枚で狙う併用パッチも視野に入れています。 *

プレスリリース:https://www.businesswire.com/news/home/20260624176542/en/

公式HP: https://theheropatch.com

Signos: 体重管理向けのFDA認可OTC血糖モニタリング基盤を提供するSignosが2000万ドルを調達

Signos CGMとアプリ

画像出典: https://www.drugdeliverybusiness.com/signos-fda-green-light-otc-cgm/

Signos(米国)は、20 millionドル(約31億円、1ドル=155円)を調達しました。ラウンドは非公開で、GV(Google Ventures)のほか、DexcomとBlue Cross Blue Shield of Alabamaが出資しています。

Signosは、体重を管理したい人向けに、食事や運動に対して自分の体がどう反応するかを見える化するサービスです。女性の健康領域では、体重変化や血糖の乱れが妊娠前後や更年期、GLP-1製剤の使用時の生活改善とも関わるため、日々の代謝状態を把握しやすくする点に意味があります。

主力サービスのSignosは、DexcomのSteloグルコースバイオセンサーと独自AIを組み合わせたOTCの代謝健康プラットフォームで、利用者ごとの実測血糖反応に基づいて食事や活動をスコア化します。どの食品で血糖が上がりやすいか、どの食事なら安定しやすいかを具体的に示せるため、食欲抑制薬だけに頼らず、行動変容を続けやすくすることが特徴です。

また、Dexcomの消費者向けCGM販売サイトStelo.comでも購入できるようになり、保険者からの出資は、GLP-1関連コストが高まる中で、より費用対効果の高い健康管理手段として期待されていることを示しています。 *

プレスリリース:https://www.businesswire.com/news/home/20260527908522/en/Signos-Inc.-Maker-of-the-First-FDA-cleared-CGM-System-for-Weight-Management-Raises-%2420-Million-to-Accelerate-Growth

公式HP: https://www.signos.com

Kimba: AIと香りで睡眠の質改善を目指すKimbaがSeedで650万ドルを調達

Kimba 睡眠支援デバイス

画像出典: https://www.kimba.ai

Kimba(米国)は、Seedで650万ドル(約10億1,000万円、1ドル=155円)を調達しました。 睡眠の乱れは、更年期やペリメノポーズ(閉経に向かう過渡期)、ホルモン変化に伴う不調でもよく見られるため、眠りを測るだけでなく実際に改善を目指す技術はWomen's Healthの文脈でも注目されます。 Kimbaは、眠っている人に合わせて香りを出し分け、睡眠の質を高めることを目指すベッドサイド型の睡眠支援サービスです。 初期調査では、50人を48夜追跡した結果、睡眠の質と認知パフォーマンスの有意な改善が示されており、利用者にとっては翌日のだるさや集中しにくさの軽減につながる可能性があります。 主力機能のKimbaは、呼吸パターン、体動、心拍変動、ストレス指標を内蔵センサーやWHOOP、Oura、Apple Watch、Fitbit、Garminとの連携で取得し、AIがリアルタイム解析して、睡眠中でも覚醒を起こしにくい嗅覚経路を通じて最適なタイミングで香り刺激を与えるデジタル睡眠介入です。 あわせて、水性で植物由来の独自香料を個々の睡眠パターンに合わせて調整し、睡眠ポリグラフでの検証試験やPTSD関連の睡眠障害を対象とした追加臨床研究も進めています。 *

プレスリリース:https://www.businesswire.com/news/home/20260616865272/en/Kimba-Introduces-AI-Powered-Scent-Therapy-for-Better-Sleep

公式HP: https://www.kimba.ai

Contraline: 男性向け避妊薬候補NES/T Gelの開発を進めるContralineがSeries Bで9,250万ドルを調達

Contraline NES/T Gel

画像出典: https://www.contraline.com/

Contraline(米国)は、Series Bで9,250万ドル(約143億円、1ドル=155円)を調達しました。今回の資金は、男性向け避妊薬候補「NES/T Gel」を2027年予定の第3相試験へ進めるために使われます。

男性向けの薬による避妊は、長年ほとんど選択肢がなかった分野です。Contralineは、その空白を埋めることを目指す企業で、カップルの家族計画における選択肢を広げようとしています。

NES/T Gelは、男性が1日1回皮膚に塗ることで避妊を目指すサービスです。女性だけに避妊の負担が偏りやすい現状に対し、男性自身が継続して使える新しい方法になり得ます。

この製品は、世界規模の第2b相試験で462組のカップルが参加し、有効性、安全性、使用をやめた後に元に戻ること、使いやすさで前向きな結果を示しました。承認されれば、男性向けとして初の薬による避妊という実際の選択肢が生まれ、利用者やカップルは自分たちに合う避妊方法を選びやすくなります。

NES/T Gelは、合成プロゲスチンのsegesterone acetate(Nestorone)とテストステロンを組み合わせた1日1回の外用ホルモン製剤で、精子産生を抑制しながら生理的テストステロン濃度を維持する点が中核です。加えて、Contralineは非ホルモン性で長期間作用する可逆的避妊薬候補「ADAM」も開発しています。 *

プレスリリース:https://www.businesswire.com/news/home/20260602516189/en/Contraline-Announces-%2492.5-Million-Series-B-Financing-to-Advance-NEST-Male-Contraceptive-into-Late-Stage-Development

公式HP: https://www.contraline.com

Dioseve: 体外受精の負担軽減をめざす卵子成熟技術でSeries A延長ラウンドを実施

Dioseve(日本、東京)は、Series Aで700万ドル(約10億8,500万円、1ドル=155円)を調達しました。今回の延長ラウンドにより、NEDOの支援採択分を含む累計調達額は約2,000万ドル規模に達しています。

不妊治療、とくに体外受精は、女性にとって通院や自己注射、ホルモン投与の負担が大きい領域です。DioseveのReproNestは、体外受精を受ける人向けに、採卵した卵子を体の外で育てて成熟を助ける培養プロダクトです。

これにより、従来の体外受精で必要になりやすい約10日間のホルモン刺激や繰り返しの通院、自己注射、薬剤費を減らせる可能性があります。前臨床データでは、一般的な体外卵子成熟の培養法より卵子の成熟改善が示唆されており、患者の身体的、心理的、経済的な負担軽減が期待されます。

主力のReproNestは、iPS細胞から作製した卵巣支持細胞を用いる共培養技術で、細胞治療として患者に投与するのではなく、IVF工程内で卵子成熟を支援する点が特徴です。Dioseveは今後、製造工程と品質基準の検証を進め、臨床応用に向けた開発を加速させる方針です。 *

プレスリリース:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000103378.html

公式HP: https://dioseve.com

HerLifeLab: 更年期ケア特化のオンライン診療「Vivalle」を運営するHerLifeLabがPre-Series Aで1.3億円を調達

Vivalle オンライン診療

画像出典: https://vivalle-mydoctor.com/

HerLifeLab(日本、沖縄県恩納村)は、Pre-Series Aで1.3億円を調達しました。米ドル換算では約83.9万ドル(約1.3億円、1ドル=155円)です。

更年期は女性の多くが不調を抱える一方、受診につながりにくい女性ヘルスケアの重要領域です。HerLifeLabのVivalleは、更年期に悩む女性が自宅から専門医に相談でき、あわせてカウンセラーの継続支援も受けられるオンライン診療サービスです。

この仕組みにより、限られた診察時間だけでは拾いにくい不調や生活面の悩みも相談しやすくなり、これまで累計約1万回の診療を提供し、利用者の90%以上が症状改善を実感しました。治療開始後の継続率も95%と高く、途中で受診をやめずに必要なケアを受け続けやすいことが利用者にとっての大きな価値です。

主サービスのVivalleは、産婦人科専門医のオンライン診療に、看護カウンセラーによる月次モニタリングを組み合わせた更年期特化のデジタル医療サービスです。中核となるのは、ホルモン補充療法(HRT)や漢方、生活指導などを一人ひとりの症状に応じて組み合わせる個別最適化ケアで、今後はAI活用を含むプロダクト開発も強化していきます。 *

プレスリリース:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000007.000133842.html

公式HP: https://vivalle-mydoctor.com/

薬事承認ニュース

BrightHeart: AI活用の出生前超音波解析プラットフォームがEUでCE Markを取得

BrightHeart B-Right AI 画面

画像出典: https://www.brightheart.ai/

BrightHeartが、妊婦健診で使う超音波検査の質を高めるAI支援プラットフォームについて、欧州連合でCE Markを取得しました。これにより、施設ごとの体制や検査を行う人の経験差に左右されやすかった出生前検査に、この技術を日常診療として組み込みやすくなります。

患者や利用者にとっては、胎児の先天異常、とくに重大な先天性心疾患の見逃しや誤判定が減る点が大きな意味を持ちます。臨床検証では、主要な先天性心疾患の出生前検出が96.4%改善し、偽陽性は88%、偽陰性は70%減少しました。より早い段階で適切な説明や受診先の検討につなげやすくなる可能性があります。

承認されたのはB-Right AIで、クラウド型の出生前超音波解析プラットフォームです。超音波画像の取得中に検査の網羅性をライブで評価し、胎児の重要臓器の形態を解析します。既存の超音波装置に接続でき、新しい機器の導入は不要です。なお同社は米国でも、関連技術でFDAのクリアランスを5件取得済みです。 *

プレスリリース:https://www.brightheart.ai/

公式HP: https://www.brightheart.ai/

Spotlight Medical: 乳がん再発リスクを標準病理画像と診療データで判定するAI予後検査がEUでCE Markを取得

Spotlight Medical myStage Dx レポート

画像出典: https://mystagedx.com/professionals.html

Spotlight Medical(フランス、パリ)は、早期乳がんの再発リスクを見極める新しい検査について、EU IVDRに基づくCE Markを取得した。標準診療ですでに作成される病理標本画像と診療データを使うため、追加の採血や特別な検査機器が不要で、欧州の病院や検査室で導入しやすい点が特徴だ。

患者にとっては、再発の可能性が低い人を早い段階で見分けやすくなり、必要以上に強い治療を避ける判断に役立つ可能性がある。検証研究では、臨床的には高リスクと見なされたER+/HER2-早期乳がん患者の19.4%を低リスクと判定し、その群では9年時点で95.4%が遠隔再発や乳がん関連死を免れていた。一方、低リスクではない群は76.8%で、差は18.6ポイントだった。

承認されたのはmyStage Dxで、デジタル化したH&E染色スライドと基本的な臨床病理情報を解析するAIベースの予後検査である。対象はER陽性かつHER2陰性の早期乳がんで、医師が治療強化の必要性と過剰治療のリスクを比較しながら方針を決める支援に用いられる。 *

プレスリリース:https://www.businesswire.com/news/home/20260623685284/en/

公式HP: https://spotlightmedical.com