「Women’s Health Media」では、Women’s Health分野の動向を調査・発信しています。
本号では、今年3月に報じられた資金調達10件・薬事承認1件の事例を紹介します。
資金調達では、周産期ケア、予防スクリーニング、生殖医療、女性の脳ヘルスなど、日常の健康管理から専門医療までさまざまな事例をご紹介しています。薬事承認では、超音波画像から出産予定日を推定するAIソフトのFDAの認証取得事例を取り上げています。
ぜひご一読ください。
資金調達ニュース
Pregnolia: 子宮頸部の硬さを測る診断機器で早産リスク予測の高度化を目指すPregnoliaが資金調達

画像出典: https://en.pregnolia.com/product
Pregnolia(スイス、チューリッヒ)は、助成金として440万ドル(約6.8億円、1ドル=155円)を調達しました。資金はEuropean Innovation Council(EIC)Acceleratorと民間投資家から拠出されています。
同社が取り組むのは早産リスクの予測で、妊娠中の見極めが難しいため、必要な介入の遅れや過剰な対応につながりやすい周産期医療の課題です。
Pregnolia Systemは、妊婦向けに子宮頸部の硬さを測る診断機器です。子宮口の近くの組織がどれくらい柔らかいかを数値で捉え、早産の可能性を今ある方法より正確に見分けることを目指します。
これにより、早産の可能性が高い人をより適切に見つけやすくなり、経過観察や追加検査、治療判断を早めやすくなります。本機器が用いる子宮頸部の硬さが従来法より信頼できる予測指標であることは査読付きの論文においても報告されています。
主力のPregnolia Systemは、子宮頸部スティフネスを定量評価する産科向け診断デバイスです。新たなバイオマーカーとして cervical stiffness を用い、早産予測を日常診療に組み込むことを狙っています。今回の資金は、この臨床的妥当性の追加検証と、 routine care への導入推進に充てられます。 *
公式HP: https://www.pregnolia.com
YOU(th) Health Tech: スマートフォンを予防医療のスクリーニング端末に変えるプラットフォーム拡大へ450万ドルを調達

画像出典: https://www.youth-healthtech.com/
YOU(th) Health Tech(ドイツ、ベルリン)は、450万ドル(約6億9,800万円、1ドル=155円)を調達しました。
同社は、スマートフォンを予防医療の入口に変えるヘルスケア企業です。予防医療は、病気が重くなる前に変化を見つける考え方ですが、時間や費用、通院の手間が壁になり、適切な頻度で検査を受ける人は限られます。
YOU(th)のプラットフォームは、スマホで撮る顔の動画や音声、皮膚や目の画像、タイピングのくせ、歩数などから、利用者の健康状態を短時間で確認できるサービスです。
これにより、専用機器や採血、通院がなくても血圧や酸素の状態、呼吸の異変、肌の状態、水分量などをまとめて把握しやすくなり、早めの受診や生活改善につなげやすくなります。2分以内で50以上の指標を見られる点も、継続利用のしやすさに直結します。
中核機能は、スマホから得られる顔動画、音声、画像、行動データを統合し、10超の臓器系にまたがる50以上のデジタルバイオマーカーを推定する予防スクリーニング技術です。B2B2Cモデルで医療機関や保険者と連携し、すでに20件超の契約を結んでいます. *
プレスリリース:https://www.youth-healthtech.com/
公式HP: https://www.youth-healthtech.com/
WHOOP: Series Gで5億7,500万ドルを調達し、女性向け血液バイオマーカーパネルを含む個人向け健康管理基盤を拡大

画像出典: https://www.whoop.com/es/en/press-center/whoop-announces-series-g-funding/
WHOOP(米国)は、Growthで5億7,500万ドル(約891億円、1ドル=155円)を調達しました。 WHOOPは、女性の健康のための取り組みとして、月経周期、ペリメノポーズ(閉経に向かう過渡期)、甲状腺、骨の健康といった女性特有の変化を継続的に把握しやすくする取り組みを進めています。
主サービスのWHOOPは、腕に着けるデバイスとアプリで、睡眠や疲労のたまり具合、運動負荷、日々の体調変化を見える化する個人向け健康管理サービスです。
これにより利用者は、体調の変化を感覚だけでなくデータでも捉えやすくなり、生活習慣の見直しや受診の判断を早めやすくなります。会社全体では会員数が世界で250万人を超え、女性会員は新規会員の中で最も成長が速く、前年比150%増、WHOOP AIの利用も男性より30%多く、女性の継続的な健康管理ニーズの強さが示されています。
なかでも注目されるのがWomen’s Health Specialized Blood Biomarker Panelで、11種類の女性特有バイオマーカーを用いて、周期調整、ペリメノポーズ、甲状腺機能、骨代謝の状態を臨床グレードに近い形で把握し、ウェアラブル由来データと組み合わせたより高度なモニタリングにつなげようとしています。 *
プレスリリース:https://www.whoop.com/es/en/press-center/whoop-announces-series-g-funding/
公式HP: https://whoop.com
Nadia Care: ハイブリッド型の母体ケアモデル拡大に向け1,200万ドルを調達
Nadia Care(米国)は、1,200万ドル(約18億6,000万円、1ドル=155円)を調達しました。調達した資金は、妊娠中から出産後までを支えるハイブリッド型の母体ケアモデルを新たな地域へ広げるために使われます。
母体ケアはWomen's Healthの中でも重要な領域で、妊娠や出産の前後に十分な支援を受けられないと、早産や救急受診、赤ちゃんの重い合併症につながることがあります。
Nadia Careは、妊婦や新しい母親向けに、自宅での支援とオンライン相談を組み合わせて受けられるサービスです。看護師やドゥーラ、複数の専門職が既存の医療機関と連携しながら、日々の不安相談や受診調整、出産前後の学習支援までを継続して支えます。
利用者にとっては、必要な支援に早くつながりやすくなり、約4,000人の実績ではNICU入院日数が60%減り、低出生体重は47%減、早産は38%減、救急外来受診は25%減りました。
主力機能は、Maternity Navigatorsを中心とする継続伴走型の母体ケアで、登録看護師、ドゥーラ、多職種チームが在宅支援とバーチャルケアを統合し、Medicaid加入者を含む妊産婦の周産期リスク管理を補完します。あわせて、授乳支援、栄養指導、ケアコーディネーション、妊婦教育や新米親向け教育も提供しています。 *
公式HP: https://www.nadiacare.com
myStoria: 生殖医療の受診準備と記録管理を支えるAI・有人併用基盤の拡大へSeedで162.5万ドルを調達

画像出典: https://www.mystoria.com/blog/seed-round
myStoria(カナダ)は、Seedで162.5万ドル(約2億5,200万円、1ドル=155円)を調達しました。
同社が扱う生殖医療は、月経痛、PCOS、子宮内膜症、更年期前後の不調など、女性の健康課題と重なる領域です。こうした症状は診断や治療までに時間がかかりやすく、複数の医療機関をまたいで自分で情報をまとめる負担が大きいことが課題でした。
同社は、myStoriaという患者向けアプリを提供しています。利用者は自分の検査結果や紹介状、受診歴を一か所にまとめ、次の受診で何を聞くべきかを整理でき、必要に応じて訓練を受けた担当者の支援も受けられます。
これにより、毎回同じ説明を繰り返す負担が減り、受診の抜け漏れを防ぎやすくなります。特に子宮内膜症では診断まで平均7〜10年かかるとされ、PCOSも未診断が多い中で、症状や記録を継続的に残せることは早い受診判断や適切な紹介につながる可能性があります。
中核機能は、AIによる医療記録の時系列整理とパターン統合に、人によるレビューを組み合わせたナビゲーション基盤です。ユーザーの全履歴を蓄積し続けることで、長期にわたる複雑な受診経路でも、一貫した患者データをもとに受診準備やケア調整を支援します。
補助機能として、個別化した受診前質問の提示、症状トラッキング、安全な書類保管も備えています。 *
プレスリリース:https://www.mystoria.com/blog/seed-round
公式HP: https://mystoria.com
Prickly Pear Health: 女性の脳の健康に着目するAIプラットフォームがPre-Seedを60万ドル超に拡大
Prickly Pear Health(米国、アリゾナ)は、Pre-Seedで60万ドル(約9,300万円、1ドル=155円)超を調達しました。女性の脳の健康はWomen's Healthの中でもまだ新しい領域で、妊娠、産後、更年期などのホルモン変化に伴う物忘れや頭のぼんやり感、強いストレスのような不調は、生活の質に大きく関わる一方で、専用の支援サービスが少ない分野です。
同社のPrickly Pear Healthは、こうした時期の女性向けに、声の変化や日々の行動、生活習慣のデータをもとに心と頭の状態を分かりやすく知らせるデジタルサービスです。利用者は、自分では説明しにくい不調の傾向を把握しやすくなり、早めに対策を考えたり、医療者や支援者に相談したりしやすくなります。創業は2024年で、すでにアクティブユーザーは2,000人を超えています。
主機能はPrickly Pear Healthによる女性の脳ヘルス解析で、AIが音声分析に加えて行動データ、ウェアラブルデータ、ライフスタイル情報を統合し、ホルモン変動に伴う認知機能や情動の変化を個別に推定して、認知パフォーマンスと情動レジリエンスの維持を支援します。今後はメンタルヘルス診療所での展開拡大を進める計画です。 *
公式HP: https://pricklypear.io/
28x: オンデバイスで動く無料の月経管理アプリを立ち上げ、Philips Foundationなどから約155万ドルを調達
28x(オランダ)は、Seedで155万ドル(約2.4億円、1ドル=155円)を調達しました。出資はPhilips Foundationと、社会的意義を重視する40人のエンジェル投資家が参加しています。
28xは、月経管理と女性の健康情報を無料で使えるアプリです。女性向けヘルスケアの中でも、料金や言語、読みやすさの壁で必要な情報に届きにくい人を支えることを重視しています。
利用者は生理周期を記録しながら、自分に合った読みやすさで健康情報を確認できます。クラウドに個人データを置かない設計のため、情報漏えいや第三者提供の不安を減らし、周囲の目が気になる場面でも使いやすい点が利用者にとっての大きな利点です。
主力機能の28xは、月経周期トラッキングと女性医療コンテンツを組み合わせたオンデバイス型のデジタルヘルスアプリで、処理を端末内で完結させるアーキテクチャを採用しています。今後は100の健康トピック、30超の言語対応、端末内AIによる質問処理も追加予定です。 *
プレスリリース:https://www.my28x.com/about
公式HP: https://philips-digital.com/pregnancy-new/
Diamens: 月経血を用いた子宮内膜症の分子診断検査の臨床検証と欧州認証を進めるための資金調達を実施
Diamens(オーストリア、リンツ)は、ラウンドと調達額を非公開で資金調達を実施しました。
子宮内膜症は女性の健康課題の代表例のひとつで、世界で約1億9,000万人が影響を受ける一方、診断まで平均約7年かかるとされます。現在の標準的な確定診断は全身麻酔下の腹腔鏡検査で、体への負担や費用の面で受けにくさがあります。
Diamensは、月経血を自宅で採取して送るだけで、子宮内膜症の有無を調べる分子診断検査を開発しています。 この仕組みにより、侵襲的な検査に進む前のハードルを下げ、より早く医療機関での評価につなげやすくなる可能性があります。自宅採取と郵送に対応するため、通院負担の軽減や検査への心理的な抵抗の低下も期待されます。
主力技術は、月経血中の子宮由来シグナルをPCRで解析し、独自のバイオインフォマティクス・パイプラインで同定した子宮内膜症の分子マーカーを検出する非侵襲診断です。今回の資金とオーストリアの公的助成金を活用し、多施設共同臨床試験と欧州認証を進めます. *
公式HP: https://www.diamens.org
May Health: PCOS関連不妊症向けAnavi Systemの米国試験完了と欧州展開に向け1,170万ドルを調達
May Health(フランス、メンロパーク)は、11,700,000ドル(約18億1,400万円、1ドル=155円)を調達しました。ラウンド名は公表されていません。
同社が取り組むPCOSは、多のう胞性卵巣症候群とも呼ばれ、排卵が起こりにくくなることで妊娠しづらさにつながる、女性に多い健康課題です。
Anavi Systemは、PCOS関連の不妊に悩む女性向けの医療機器で、薬が効きにくい人や薬を使えない人、使いたくない人に対し、1回の外来処置で排卵の回復を目指します。
これにより、排卵しにくさが原因で妊娠に進みにくい人に新たな選択肢が生まれ、体外受精など次の段階に進む前に、より負担の少ない治療を受けられる可能性があります。PCOSは世界の女性の10〜13%にみられるとされ、対象となる患者層は大きい領域です。
Anavi Systemは、PCOS関連不妊症の根本要因に介入して排卵再開を狙う単回処置型の医療機器で、米国では15超の不妊治療施設でREBALANCEピボタルIDE試験が進行中です。欧州ではEU MDRに基づくCE Markを取得済みで、今回の資金は米国試験の完了と欧州市場投入準備に充てられます. *
公式HP: https://mayhealth.com/
Arya: AIと人の専門支援を組み合わせたカップル向けウェルネス基盤の拡大に向けGrowthで2,100万ドルを調達
Arya(米国)は、Growthで2,100万ドル(約32億6,000万円、1ドル=155円)を調達しました。
同社が扱うのはカップルの関係性の健康で、女性向け健康領域でも、心身の不調や孤立感に深く関わる周辺課題として位置づけられるテーマです。
Aryaは、パートナーとのすれ違いや会話のしづらさを感じる人に向けたカップル向けウェルネスサービスです。利用者はそれぞれ個別にアプリ上で相談でき、相手に直接言いにくい悩みも整理しながら、関係改善のための働きかけを受けられます。
これにより、けんかや距離感の背景にある不満を早めに見つけやすくなり、会話のきっかけづくりや親密さの回復を進めやすくなります。記事では米国に7,200万組のカップルがいて、6人に1人が自分の関係の中で孤独を感じているとされ、需要の大きさが示されています。
主力機能は、AI搭載の「Intimacy Concierge」が各パートナーのプロフィールと継続的な対話履歴を基に、関係の緊張点を抽出し、相手側には適切なツールや働きかけを提示する点です。汎用チャットボットのような一方向の助言ではなく、二者間のダイナミクスを前提に設計されていることが特徴です。
加えて、人の関係性専門家の支援や、毎月のシーン提案、学習コンテンツ、親密さを深めるための必需品のキュレーションも提供します。 *
公式HP: https://arya.fyi
薬事承認ニュース
Ultrasound AI: 出産予定日を超音波画像だけで推定するAIソフトがFDA De Novoクリアランスを取得
Ultrasound AI(アメリカ)は、妊婦の通常の超音波画像だけから出産予定日を推定する新しい医療AIソフトについて、米食品医薬品局(FDA)のDe Novoクリアランスを取得しました。月経開始日や従来の妊娠週数の見積もりに頼りにくいケースでも使える点が特徴で、同社によるとこの分類で認められた初の製品です。
これにより、妊婦健診の場で医師がより早く、より確からしい形で出産時期を見通せる可能性があります。査読付き研究では5,700人超のデータを用い、超音波画像だけで出産までの日数を高い一致度(R二乗=0.92)で予測しました。出産時期の見立てが正確になれば、早産リスクへの備えや受診計画、介入の判断をしやすくなり、母子のケア向上につながることが期待されます。
承認されたのはクラウド型ソフトウェアDelivery Date AIで、治療ではなく診断補助にあたるデジタル技術です。数百万枚の匿名化された超音波画像で学習した深層学習モデルが、胎児と母体の特徴を解析して予測を行います。多くの既存の超音波装置に対応し、導入に数分、結果表示に数秒という運用のしやすさも打ち出されています。 *
プレスリリース:https://ultrasound.ai/news
公式HP: https://ultrasound.ai
まとめ
今回は、資金調達 10 件、薬事承認 1 件の計 11 件を紹介しました。