「Women’s Health Media」では、Women’s Health分野の動向を調査・発信しています。本号では、今年7月に発表された資金調達7件・薬事承認3件の事例をご紹介します。
7月は、女性ホルモンを連続して測るパッチ型デバイスの開発が2件並びました。採血や尿検査のたびに通院しなくても、排卵や月経周期の変化を日々追いやすくなることが期待されています。
乳がんでは、MRIで病変を見分けやすくするソリューションの資金調達に加え、進行乳がん向けの新薬や維持療法の承認拡大も続いています。
ぜひご一読ください。
資金調達ニュース
Muun Health: 女性ホルモンを連続測定するウェアラブル開発に向けて助成金を獲得
Muun Health(エストニア)は、助成金で70万ユーロを獲得しました。これは約76万ドル(約1.2億円、1ドル=155円)に相当し、女性ホルモンを連続して測れるSmart Patch Platformの開発に充てられます。
同社が取り組むのは、排卵や妊娠に関わる体の変化を、日中の複数回の測定で追える仕組みです。女性ホルモンの動きは日々変わるため、Women's Healthの中でも、妊活や月経・排卵の把握に直結する領域として注目されます。
Smart Patch Platformは、肌に貼るパッチ型の機器で、女性ホルモンを測ってスマートフォンに結果を送るサービスです。尿検査用の試験紙や採血よりも、日々の変化をこまめに見やすくし、自分の体の状態を把握しやすくします。
利用者にとっては、排卵のタイミングや体調の変化をより早く知りやすくなり、妊活や受診の判断をしやすくなります。医療者にとっても、単発の検査では見えにくい変動をふまえて相談しやすくなります。
主力のSmart Patch Platformは、間質液からホルモンをリアルタイムに測る連続モニタリング用ウェアラブルです。今回の助成金は、センサーの生体選択層を改良し、特定のホルモンをより正確に捉える基盤技術の開発に使われます。 *
プレスリリース:https://eis.ee/eis-toetab-12-ettev%C3%B5tte-teadus-ja-arendustegevust-15-miljoni-euroga-2/
公式HP: https://muunhealth.com
Kāhu SiliconBio: 女性の健康課題向け連続ホルモン測定技術の開発で助成金を獲得
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画像出典: https://kahu.bio
Kāhu SiliconBio(イギリス、エディンバラ)は、助成金として約155万ドル(約2.4億円、1ドル=155円)に相当する120万ポンドを獲得しました。
ホルモンの乱れは、月経に関わる不調や子どもを望む人の悩みなど、女性の健康課題と深く関わりますが、従来の検査は検査時点の数値しか分からず、日中の変化を追いにくいという限界がありました。Kāhu SiliconBioの連続ホルモン測定技術は、日中を通してホルモンの動きを追い、睡眠やストレス、食事、月経周期の変化と合わせて見られるようにするサービスです。
これにより、利用者は一度きりの検査では見えにくかった体調変化の流れを把握しやすくなり、ホルモンの乱れが関わる不調の理解や受診相談の精度向上が期待されます。
同社の主機能は、女性の健康用途に向けて開発中のバイオセンサーによる連続ホルモンモニタリングで、単回測定ではなく経時的なホルモン変動を取得し、将来的には多嚢胞性卵巣症候群、子宮内膜症、不妊などホルモン不均衡が関わる疾患の新たな診断基盤になることを目指しています。 *
プレスリリース:https://www.sprind.org/en/actions/challenges/continuous-hormone-monitoring
Estrigenix Therapeutics: ERβを狙う非ステロイド治療の前臨床開発に向けSeries Seedの初回クローズで200万ドルを調達
Estrigenix Therapeutics(米国)は、シードラウンドで200万ドル(約3.1億円、1ドル=155円)を調達しました。
同社が取り組むのは、更年期関連症状にも関わる女性ホルモンの働きを、従来のホルモン療法とは別の方法で狙う創薬です。
Estrigenix TherapeuticsのERβプラットフォームは、更年期に伴う不調や将来的には神経変性疾患に向けて、エストロゲン受容体のうちβを選んで働かせる非ステロイド治療薬の開発基盤です。
従来のホルモン療法では、症状改善が期待できる一方で、一部の受容体への作用が治療上の懸念につながることがありました。Estrigenixのアプローチは、別の受容体を選択的に狙うことで、そうしたリスクを抑えながら治療の選択肢を広げる可能性があります。
主力のERβ選択的治療は、選択的エストロゲン受容体β作動を目指す非ステロイド化合物群で、ERαを回避しつつ前臨床段階で複数適応に展開できる点が特徴です。
今回の資金は、追加の前臨床研究開発を進め、リード治療候補を今後の臨床試験や製薬企業との提携につなげるために使われます。 *
プレスリリース:https://www.estrigenix.com/2026/07/21/estrigenix-therapeutics-announces-series-seed-financing/
Intu Diagnostics: 電源や検査機器なしで30分のHPV分子診断を目指すカートリッジ開発でブリッジ調達

画像出典: https://www.intudiagnostics.com
Intu Diagnostics(ドイツ)は、ブリッジとしてで126.5万ドル(約1億9,600万円、1ドル=155円)を調達しました。 子宮頸がんは主にHPV感染が原因で起こる病気ですが、検査室や専門スタッフが足りない地域では早期発見の機会が限られやすく、女性の健康課題として大きな負担になっています。 同社が開発する検査カートリッジは、HPVを調べるためのもので、利用者や医療現場が検体を入れて30分待つだけで、結果を色の変化で確認できるようにするサービスです。
この仕組みにより、これまで検査室や専用機器が必要だった精度の高い検査を、設備の乏しい場所でも実施しやすくなり、子宮頸がんの早期発見につながる可能性があります。既存の簡易検査では見逃しうる感染も捉えることを目指しています。
主力のオールインワン分子診断カートリッジは、PCRと同じく分子レベルでHPVを検出する設計でありながら、リーダー機器、電源、アプリ、追加装置を必要としない点が特徴です。2020年にはタンザニアでクラミジアによる眼感染症の診断プロトタイプ試験も行われており、今後は呼吸器ウイルスや性感染症、マラリア、結核への応用も見込まれています。 *
公式HP: https://www.intudiagnostics.com
Imagion Biosystems: HER2陽性乳がん向け分子MRI造影剤MagSenseの第2相試験開始に向け259万ドルを調達

画像出典: https://imagionbiosystems.com
Imagion Biosystems(オーストラリア)は、259万ドル(約4億円、1ドル=155円)を調達しました。FDAがHER2陽性乳がん向けの第2相臨床試験を認めたことを受けた資金調達で、年内の患者登録開始を見込んでいます。
同社のMagSenseは、乳がんが疑われる人に向けたMRI用の画像診断技術です。MRI画像にがんの目印を加えることで、形だけでは判断しにくいしこりについて、良性か悪性かをより見分けやすくすることを目指しています。
これにより、検査結果の確信度が高まり、不要な追加検査や診断の迷いを減らせる可能性があります。さらに、Siemens Healthineersとの連携で画像の質を高めつつ撮影時間を短くし、MagSenseの使用量を抑えながら検査しやすくする計画です。
MagSenseは、HER2を標的とする磁性ナノ粒子を使ってMRIに分子特異性を持たせる分子MRI造影剤で、従来の解剖学的な見え方だけに頼る画像診断を補完します。放射性物質を使わない設計も特徴で、今後は前立腺がんや卵巣がんへの展開も検討されています。 *
プレスリリース:https://imagionbiosystems.com/news/ibx-secures-firm-commitments-for-a3-5m-capital-raising/
公式HP: https://imagionbiosystems.com
Rejoni: 子宮内手術後の癒着予防を目指すJuveena Hydrogel Systemの商業化準備に向け2,500万ドルを調達

画像出典: https://rejoni.com/technology
Rejoni(米国)は、2,500万ドル(約38億8,000万円、1ドル=155円)を調達しました。
子宮内手術(たとえば子宮内膜ポリープの切除など)のあとに起こる合併症は、一般には知られにくい領域です。特に子宮内癒着は、子宮内の壁どうしがくっついてしまう状態で、痛みや月経異常、不妊の原因になりえます。
Juveena Hydrogel Systemは、子宮内手術を受けた人向けに、回復中の子宮内で壁どうしが癒着しにくい環境をつくる医療機器です。手術後の合併症を減らすことで、その後の痛みや月経トラブル、不妊につながるリスクの軽減が期待されます。
主機能は、専用の経頸管カテーテルで子宮腔内に一時的なソフトハイドロゲルスペーサーを留置し、創傷治癒のあいだ物理的に組織の接触を抑える点です。これにより、子宮内癒着の発生率と重症度の低減を目指します。今回の資金は、FDA承認を見据えた製造拡大や供給体制整備、医師・患者向け展開、商業化準備に使われます。 *
公式HP: https://www.rejoni.com
Juno Bio: 膣マイクロバイオーム検査のJuno Bioが380万ドルを調達し、女性医療向けの自社シーケンス検査ラボを開設

画像出典: https://www.juno.bio
Juno Bio(米国、オークランド)は、シードラウンドで380万ドル(約5億8,900万円、1ドル=155円)を調達しました。
同社が取り組むのは、見落とされやすい女性の膣内環境の検査です。おりものの異常やかゆみ、再発しやすい感染症は原因が一つとは限らず、一般的な検査では十分に分からないことがあります。
Juno Bioのvaginal microbiome and STI testは、女性向けの膣マイクロバイオームと性感染症の検査サービスで、約1万種類の細菌や真菌に加え、4つの一般的な性感染症を一度に調べられます。
これにより、利用者は症状の背景にある複数の原因を把握しやすくなります。Juno Bioによると、導入前は67.5%の利用者で誤診や見逃し、過剰診断があり、適切に治療できていたのは13%にとどまりました。また、利用者の約半数で複数の感染が同時に起きており、従来検査で見逃されやすい点も示されています。
主力のvaginal microbiome and STI testは、次世代シーケンシングを使って膣内細菌叢と病原体を高解像度で解析し、細菌性膣症、腟カンジダ症、aerobic vaginitis、cytolytic vaginosis、エストロゲン変化関連の状態まで含めて臨床判断につながる情報を返す検査です。あわせて、CLIA認証の自社ラボ処理、医師によるオーダーとレビュー、遠隔医療や薬局連携も進めています。 *
公式HP: https://www.juno.bio
薬事承認ニュース
Pfizer: 乳がん維持療法でIBRANCEのFDA承認を取得
Pfizer(アメリカ)は、進行した乳がんが広がった患者向けの維持療法として、新しい薬の使い方についてFDA承認を取得した。初回の治療で病状が抑えられた後に追加で用いることで、病気の悪化を遅らせることを目指す承認だ。
臨床試験では、この薬を既存治療に加えることで、病気の進行または死亡のリスクが24%低下した。治療後しばらく安定していても再び悪化しやすい患者にとって、状態をより長く保てる可能性がある。
承認されたのはIBRANCE(一般名 palbociclib)で、CDK4/6阻害薬に分類される治療薬。trastuzumabと、必要に応じてpertuzumab、さらに内分泌療法と併用して使う。対象はHR陽性かつHER2陽性の局所進行または転移性乳がんで、いわゆる二重陽性の患者群に向けた維持療法となる。 *
公式HP: https://www.pfizer.com
Celcuity: 進行・転移乳がん向け新治療REVTORPYKがFDA承認を取得
Celcuity(アメリカ)は、進行した乳がんに対する新しい治療薬でFDA承認を取得した。対象は、最も多いタイプの乳がんのうち、特定の遺伝子変異がなく、転移後のホルモン治療が効かなくなった患者で、治療の選択肢が限られていた人たちだ。
患者にとっては、がんが悪化するまでの期間を大きく延ばせる点が重要だ。臨床試験では、既存治療の一つであるフルベストラント単独では中央値2.0か月だったのに対し、この薬をフルベストラントとパルボシクリブに加えた3剤併用では9.3か月に延びた。2剤併用でも7.4か月となり、腫瘍が縮小した患者の割合も1%から32%へ改善した。
承認されたのはREVTORPYK(一般名gedatolisib)で、治療薬にあたる。PI3K/AKT/mTOR経路と呼ばれる、がん細胞の増殖に関わる重要な仕組みを広く抑える分子標的薬で、クラスI PI3K全体とmTORC1/2を同時に阻害する。対象はHR陽性/HER2陰性、PIK3CA野生型の局所進行または転移性乳がんで、口内炎、発疹、高血糖などの副作用管理が重要になる。 *
公式HP: https://www.celcuity.com
Natural Cycles: AI搭載の避妊・月経周期管理アプリ向け受胎予測アルゴリズムの更新版で6回目のFDAクリアランスを取得

画像出典: https://www.naturalcycles.com
Natural Cyclesは、AIを使って妊娠しにくい日をより個別に案内する避妊・月経周期管理アプリの更新版について、FDAのクリアランスを取得しました。今回で同社にとって6回目のFDAクリアランスとなります。
この更新により、追加の避妊が不要と判断される「妊娠しにくい日」が増え、利用者は日常生活に合わせて使いやすくなる可能性があります。アプリの避妊効果は、理想的に使った場合で98%、一般的な使い方でも93%とされており、不規則な周期の人や体温・バイオマーカーデータの質が低い場合、時間とともに周期が変化する場合でも案内の改善が期待されます。
承認対象はNC° Fertility Algorithmで、Natural Cyclesアプリに組み込まれるAI搭載の受胎予測アルゴリズムです。統計モデリングと機械学習を組み合わせ、数千万件規模の実世界の受胎データを学習に用いて、非受胎日である「Green Days」の判定を個別化します。対象は避妊や周期管理を行いたい利用者です。 *